車庫から車を出そうとした瞬間、夫の動きが止まった。
「何か張り紙してあるよ!」
ん?
読んでも意味が分からない。
「警察につうほーする。」って書いてある。
穏やかじゃないことはわかるけど意味不明。
これではたとえ犯人がいたとして
犯人が読んだとしても
意味が分からないし、警告の意味を成していないと思う。
何より、電動シャッターの閉まっている内側に貼っている意味は何なんだろう?
半年くらい前はうちのポストにも怪文書が入っていた。
何度も読んで意味が分かったときにはカーッと頭に血が上った。
そのままのテンションで父に詰め寄ったけれど、要領得ない返答に力が抜けた。
熱くなるのはムダだった。
車庫に貼ってあった文書は
どうやら、半月位前から騒いでいる貴金属を盗んだ犯人への警告文らしい。
数年前からなくなっているはずの…お気に入りの時計…
諦めきれないのか、数年ぶりになくなったことを騒ぎ出している。
数年前の出来事は記憶から消えてしまっているらしい。
「犯人へ告ぐ!」の怪文書は存在しない可能性の高い犯人に対する警告文
一つ気になることができるとそのことだけを突き詰めて考えてしまう。
そして、それがいてもたってもいられない怒りに変わるらしい。
何をどう言っても、とりなしても効き目はない。
ないよりもその誤字脱字が父の頭の中を象徴している
思考回路もめちゃくちゃ
この件はしばらく続きそう
そして父は現実を受け入れることはできそうにもない。
仕方ない。嵐が去るのを待つしかない。
こんな時の私の作戦は、刺激しない。反応しない。